うちの餃子
なぜだか無性に、餃子を作りたくなることがある。
作るとなると、手間も時間もかかるし、根気もいるので、かなりの気合いが必要である。だから「手作り餃子」は、数年に一度しかわが食卓に上らない、幻のメニューである。福島移住このかた3年以上になるが、おそらくそれから一度も作っていない。
しかし、その機会は突如訪れた。
8月初頭、トライアルの前の八百屋を覗いた。長梅雨のあとの猛暑と来て、野菜が高い。特にネギ系が高い。ここの八百屋はいつも売価100円位でネギを置いている(もちろん時により本数が多かったり少なかったりするが)ので、寄ってみたのだが・・・。レジ前に、なんと「ニラ10束105円」が!
30秒間記憶を巡らせて、ニラ料理をひねり出す。そして、一度手に持ったネギを返して、10束105円を買うことにした。
大半はすぐに「ニラ醤油」に加工。ニラを刻んで醤油につけ込むだけ、というタンドー塾頭から教わったものだが、少しアレンジして、一度軽く塩もみしてから醤油につけ込むようにした。私の夏の食卓に欠かせない「冷や奴」の友となる。塩もみの効果があって、まろやかなニラ醤油ができた。もちろん「師匠」の塾頭にもお裾分け。
2把は二晩にわたって「油炒め」で食膳に。
2把は「あとでレバニラにでもしよう」というつもりで、5センチに切って冷凍庫へ。
その後すぐ、近所のスーパーで豚挽肉の「半額シール」パック発見。最近すっかり作らなくなってしまった麻婆豆腐にでもするつもりで、小分けして冷凍庫へ。ほどなく「魚三昧」が始まってしまったので、「餃子の役者」が揃い始めたのをすっかり忘れていた。
お盆があけても野菜が高い。ここのところ「疲れ気味」なのは、暑さのせいもあるけれど、どうもビタミンが足りないからのようである。買い出しに行って、目が行くのは「見切り品野菜コーナー」と相成った。そこで先日見つけたのが「紫キャベツ1/4 見切り品40円」。「ポリフェノールだ!」と心の中で叫んでカゴへ。さらにフロアを巡りながら「・・・ん、待てよ」。家にはニラと、豚挽肉。カゴには紫キャベツ。ニンニクは常時在庫しているし、あとは皮さえゲットすれば、材料はすっかり揃うのだ。お肉コーナーに行くと、棚にワンタンの皮の値引き品が・・・。形も食感も餃子の皮とは違うが、これも一興と、カゴに入れて買って帰る。で、本日の「ワンタン皮包み・紫キャベツの餃子作り」と相成った。
うちの餃子は、肉の倍くらいの野菜を入れる「野菜餃子」である。野菜はキャベツとニラ。白菜は使わない。
だいぶ以前、TVの「チューボーですよ」に、山田邦子さんが出演して、彼女の「母の餃子」を作ったことがある。見ていると、うちの餃子とほぼ同じ材料である。ただ、山田家の餃子は、野菜をみじん切りにしたあと、塩を振って布巾にくるみ、水分をギュッと絞ってしまう。邦ちゃん曰く「これで水っぽくなくなる」とのたまっていたが・・・。
こちらは、野菜の水を絞らない。でも、アンがむっちりした、食べ応えのあるものができあがる。その秘密は、アンを練る時に、片栗粉を混ぜ込んで、水分をくるみこんでしまうことにある。
野菜のみじん切りに、ニンニクのすり下ろし、挽肉、塩、胡椒、醤油、酒の調味料をテキトーに加え、片栗粉を適量加えてよく練り混ぜる。前に述べたとおり、あくまで野菜を多くする。各材料や調味料の分量ははっきり量ったことがない。あくまでテキトー、目分量。このアンを皮に包む。今回は四角いワンタンの皮だったから、ちょいと包みにくい。そして、焼き。これはやはりテレビの料理番組で、陳健一さんが解説していたのを憶えていて、応用している。フライパンをよく温めて油を少しだけ敷き、餃子を並べたら、すぐに熱湯を適量入れて蓋をして蒸すようにする。水分が飛んだら仕上げの油(うちではゴマ油にする)を加えて、すこし焦げ目をつけて完成。羽根付餃子にしたかったら、お湯に小麦粉を少し溶いておけばよい。
熱々を早速頬張る。ワンタン皮で紫キャベツという「変わり種」ではあるが、まさしく「うちの餃子の味」に仕上がった。市販の餃子や、中華料理店の餃子もいろいろ食べてきたけれど、うちの餃子は一種独特で、キャベツとニラの味と香りと食感のインパクトがググッとくる、他では味わえないものである。たぶん、片栗粉が野菜ジュースをしっかりと受け止めてくれるからであろう。この餃子のアンのレシピは、子どもの頃、母の手伝いをして覚えたものだが、自分で作るたびに、いつでも昔なじみの懐かしい味に再会できる。不思議で、なつかしい「うちの餃子」である。
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