材料(5人分):酒 1升以上、猪肉 100匁(約375グラム。なければ豚肉で)、長葱 5本、味噌(お好みのもの)適量。
用意するもの:土瓶 1〜2個、湯呑み 5個、鉄鍋 1個、箸 1膳。
作り方:
1.冬の寒さの厳しい晩に、夜回りをします。材料はすべて、ひそかに支度して、重いけれども持って歩きます。寒い中ただ歩くのもつまらないので、火の用心の掛け声にかこつけて、好きな芸事の稽古をしたり、若かった頃の思い出にひたったりすれば、仕上がりがより美味しくなります。ただし、深入りすると時間がかかるので、急ぐ時は程々にしておきましょう。
2.番小屋へ帰ってきたら、まずは火に当たってお茶を飲みます。お茶で土瓶を予め温めておくわけです。
3.おもむろに持参の酒を取出し、月番にどやされます。月番は予め温めておいた土瓶に、酒を移して火にかけるよう指示し「これは酒じゃなくて煎じ薬だ」と、ご機嫌で皆に言い聞かせます。
4.ここぞとばかりに、猪の肉を取り出します。葱は予め一口の長さに切り、適量の味噌とともに、肉と一緒に包んでおきます。
5.「口直し」を煮る鍋は、重いけれども背中に背負って、町内一回りしてきましょう。
6.「煎じ薬」が温まったら、各自の湯呑みに注いで呑みつつ「口直し」が煮えるのを待ちます。
7.箸が一膳きりないので、交替でしか「口直し」を食べられません。不衛生だと思ったら、鍋がたぎっていますから、箸の先をしばらく汁に漬けておきましょう。
8.栄養のバランスを考えて、肉と葱を程よく合わせていただきます。肉ばかり選ったり、「肉は嫌いだ」と云って葱だけ食べるふりをして、葱の間に肉をたんまり挟んでごまかそうったって、そうは行きません。
9.熱燗の「煎じ薬」の勢いで、唄(どどいつ)など唄ったりすると、せっかくの「煎じ薬」と「口直し」を、要領のいい役人にピンハネされますから、気を付けましょう。特に「口直し」は、下手に隠すと、大事なところがたいへんなことになりかねません。
そうなったら、吝嗇屋吝嗇兵衛さんの味噌問屋に奉公しましょう。冷たい酢ダコの上に座れますから……。それで治るかどうか、保証はできませんが。
最近のコメント