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2011年4月 3日 (日)

避難所落語会・2

今日は福高避難所。
さすが、体育館が大きい。あそこで、新入生はスリッパ持たされて「応援歌講習」を受けるわけだ。

その広さのためか、年齢層が幅広い。小さな子供が多い。

出囃子のラジカセの支度をしていたら、80+と思われるおんつぁまが、紙とペンを持ってきて「サインして」と、おっしゃる。
「いや、プロじゃないですから勘弁してください」とお断わりしたのだが、聞き入れてくださらない。じゃあ、何か一筆書いてさしあげれば、喜んでいただけるのだと気持ちを切り替え「どちらから避難していらしたんですか」と尋くと「イソベの蛯恒だ」という。あとの“蛯恒”は、おんつぁんの名前(蛯原恒○。○はわからなかった)。

咄嗟のこととて、金釘流で
 蛯恒さん江
 いそべの皆さんが、一日も早く、もとのところでよりよい暮らしができますように!
 とんぼ

と書いた。
蛯恒のおんつぁま、それを見て「俺の家も、津波で何にもなくなっちまったんだぁ」と、云った。そして、ワタクシのマズイ字の下に、日付を書き入れると、ニッコリしてワタクシの前から立ち去った。

耳の遠いおんつぁまに、ワタクシは何ができるだろう?
とにかく、今日の一席を懸命につとめること、そしておんつぁまのことを生涯記憶にとどめること。それくらいしか今はできない。


帰宅して地図を確かめる。磯部は、相馬市南部の集落だ。福島へ移住してきた翌年のGW、原付エイプで松川浦を訪れた。その時、磯部もかすめてきた。あの平穏だった一面の田園が、すっかり跡形もなくなってしまったのだ……。


今日の皆さんは、昨日の方々より重かった。でも、高座前に設置した椅子席で、ずっと噺を聴いてくれていた子供たちが、ニコニコしながら「おじちゃん! おもしろかった!」と握手を求めてきた。全然、子供向けの噺じゃなかったのに。
客席の後ろで、さり気なく、拍子をとってくれた、ツイ輝兄さん、ありがとう! 慰問落語のきっかけを作ってくれた、すゞめ姐さん、ありがとう! そして……未熟な我々の噺に拍手をくださった、我々よりもっとたいへんな思いをなさっている皆さん……。
むしろこちらが、元気をいただきました。
感謝です。

本日のネタ帳。

ツイ輝 権兵衛狸
すゞめ 転失気
とんぼ カラオケ病院

以上。

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コメント

お疲れ様です。

避難されている方はいつ帰れるか分からない気持ちばかりですが、でも笑っていただけることで少しでも前向きに気持ちがなれば…という願いは誰でも同じですよね。
10日は志津川へ行かれるようで…
志津川は気仙沼線、復旧には時間がかかるでしょうが、復旧が終わって機会があれば乗りに行きたいです。
なんて話はおいといて…
道中どうかお気をつけて…

投稿: 小野 | 2011年4月 4日 (月) 17時00分

小野くん、コメントありがとうございます。
あとでUpするつもりでいますが、一昨年訪れた石巻線「女川駅」の惨状・・・。眼を覆いました。
一日も早く、東北一円、気楽な「乗りつぶしの旅」ができる日が来ますように。

投稿: 卓 | 2011年4月 5日 (火) 08時03分

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