世の中は回り持ちだ。
昨日はAOZ寄席・夜席「○○の秋」。“お掃除役”をつとめさせていただきました。
まずは御来場のお客さま、ありがとうございます。今回は噺の性質上、メガネ無しで出たのですが……。いつもいらしてくださる、そして笑ってくださるあなた。ちっとも笑ってくださらないけど、しっかり聞いてくださるあなた。後ろの方で「面白くて笑いたいんだけど、人前で声出して笑ったら恥ずかしい、かも(どうしてこれが笑えるのかしら、なのかもわかりませんが……失礼!)」と控えめになさってるあなた。わが目には、ぼんやりとしか見えなかったけれど……いつもいつも、ありがとうございます。
そして、出番を終えて着替えして、さりげなく客席に交じってくださった先輩の皆さん……パーテーションの影で、もともとはワタクシが高座に上がらず担当する予定だったお囃子DJを、完璧にやりきってくださった、すゞめ姐さん。
感謝です。
根多帳
ツイ輝「カレー会議」
笑 遊「鉄砲勇助」
画楽多「馬鹿の中身」
小 笑 漫談
平 三「金明竹」
いさん「奥方のツーオン」
松太郎 漫談&マジック
とんぼ「時そば」
大入叶
いさん師匠、松太郎兄さん、時間調整をしてくださって、こちらは気持ちに相当の余裕を持てました。ありがとうございます。でも、もう少しゆっくり、たっぷりしゃべれましたねぇ。仕草とともに、大きな課題……。
今回、事前の段階では「時そばの基礎知識」マクラを振るつもりでした。フルバージョンだと「“花巻”“しっぼく”とは何か」「時刻の言い方の解説」の、二段構え。福島で最初に時そばを演ったときは……恐らく両方、やったはずです。
でも「時そば」、本題だけで15分、ほしい。最初の調子のいい客のシーンに5分。それを“検証?”するのに5分。それを真似して失敗するのに5分……。
そう思ったのと、前に「現代もの」が続いたこともあり……「今回は純粋に“古典”の本題だけで勝負してみよう」と、考えた次第。で「今日はウンチク話、やめっぺ」と、マクラ、すっぱりやめちゃいました。一応これは「正解」だったかな。
ワタクシのしつこいマクラを聞きたかったという奇特なかたがいらっしゃいましたら、単品で招んでくださいませ。「時そば」だけで一時間、話せるネタはあります。ただ、それが面白いかどうかは……、保証できかねますけど(苦笑)。
ところで、ワタクシの「時そば」は、先代・柳好師のマネ。柳好師の淡々とした語り口は大好きなんだけど、今回はちょっとだけ、ワタクシの見解を入れてみました。
それは「初日のそば屋と二日目のそば屋のキャラクターの違い」。
こだわりの表れた旨い蕎麦なのに、景気の悪い初日の店主。対して、べらぼうにまずいのに、しっかり「お得意」をゲットしている、二日目の店主。
柳好師はどちらもあまり差が無い感じで演ってらしたけど、ワタクシは「それ、ちょっと違うんじゃね?」と、思い……。
初日の「当り屋」店主像。これは、そう考えた時からあまり変わらない。もともと、他人に媚を売るなんてできない。しかも、一本、芯が通ってないとなにごとも納得いかない、頑固者。色々自らのこだわりを持って、屋台を引いているけれど……まぁ、こんな商売、儲かりゃしない。でも、それでも別にかまわない、という、悟りというか、達観がある。
自分のこだわりを全て認めてくれた通りすがりのお客……一文くらい、知らんぷりしてオマケしちゃおうじゃない。さっさと角を曲がって、去って行く……。角を曲がりながら、ひそかにニンマリしてるかも。
二日目の「孫屋」の店主。これは不思議だ。ろくでもない商品、ろくでもないサービスしかできないのに「お得意があって景気は上々」。
これを最初は「若いイケメン兄ちゃん」にしようと思ったんだけど……これが難しい。第一、自分がイケメンの対極(……ここで笑うな!)、しかもこれを噺で表現するとなると……。
で、この二日目の孫屋のキャラには、我々「福島素人落語の会」が、いつもお世話になっている“M食堂”のマスターに、勝手にご登場願いました。
いつも満面の笑顔。否定の言葉など聞いたことがありません。繁盛の元は、あの笑顔……。それが、お得意を引き寄せる。
断っておきますが、M食堂、決してまずいわけでも、サービスが悪いわけでもありませんよ!
ワタクシが、マスターの満面の笑みのみを「孫屋の店主像」に、勝手にお借りしただけのこと……。
あの、これっぽっちの悪意も感じられない笑顔で「ヘイ、四ツで!」と返され……間抜け野郎は泣き顔で「いつ、むう、なな、やあ……」と余計な銭を払いながら……心はどこか、癒されている……。
う〜む……。書き表わしてみると、ずいぶん無理な解釈ですけど。
さて、ここのところ、何かと「下ブレ要因」に見舞われているワタクシ。だから、今回「悪いあとは良い、良いあとは悪い、世の中は回り持ちだ!」のセリフには気合いを込めました。そして、M食堂のマスターの入った二人目のそば屋が、このセリフで間抜け野郎の先取りをしちゃうところ……ここで、客席のお客さまから、一番の笑いがキタ!
そうだよ、「悪いあとは良い、良いあとは悪い。だから、クヨクヨしなさんなよ。だからって、油断しなさんなよ!」と、きっと皆さん、応援してくださったんですね。ありがとうございます!
来月も、毎週、高座に上がる機会をいただいています。その間には、今、かなり居辛い状況の毎日が挟まるという……。一面“身から出た錆”でもあるし、今まで結構、悪くない思いも、してきたんだから。
良いあとは悪い。悪いあとは良い。
世の中は、回り持ちだ!
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