福島県立医大・落研定期公演・2
続き。
初めて福島県立医大落研公演を観に行ったのは、4年前。
当時一緒に高座に上がっていた虎ノ助くんが「ウチの落研、落語を演るメンバーが3人しかいないんですよぉ」と、嘆いていた。じゃあ、どんな風なのよ? と医大へ出かけたのが、4年前。
前座で上がった平三くんの「目黒の秋刀魚」に感嘆したのが、昨日のことのようだ。虎ノ助くんの堂々たる真打ぶりも、目を見張ったけれど……
そんな二人に挟まれて、不思議な創作落語を演じていたのが、ぴょん吉っつぁん。
お世辞にも上手とは云えないんだけど、彼の目というフィルターを通した「ぴょん吉ワールド」に、ワタクシは、魅了された。平三くん談によれば、彼の落語はすべて古典を下敷きにしているのだそうな。まさに換骨奪胎、落語のもっとも得意とするところを掴んでいる。
当時3年生だった、ぴょん吉っつぁん、今年、最上級6年生。定期公演最後の高座だ。
“花月”だから、落語の出は“板付”。暗転したステージの緞帳が下がり、それが上がると同時に、頭を下げた噺家が舞台に現れる。
出囃子は、本人が口ずさむ「北の国からのテーマ」。♪ラ〜、ラ〜〜、ララララ……(先週の仙台、短志師匠の高座を思い出して、独り笑い)♪
開口一番、彼はのたまった“変態!”と云われるのが、快感なんです」と。
そして語り始めたのは「時そば」。もちろん、古典そのままではない。ぴょん吉ワールド炸裂の「時そば」。彼は“下ネタだ”と終始言い訳していたけれど“破礼噺”としたら、至ってカワイイもの。下ネタというより“フェチネタ”である。
……ここまで書いて、やっと気が付いた。
ぴょん吉つぁん自身は、オッパイ星人ではない、んだろう。
メガネのうちに蔵した眼力で、周りの連中の行動を見つめている。周りの連中の行動を、面白がって傍観している冷静さがある。でも、その視線はちっとも冷たくはなくて、むしろ、温かい。それも、湿度の高いうっとうしさはなくて、カラっと晴れ渡った、秋空のさわやかさを伴って……。
ぴょん吉っつぁん。類い稀な、落語家だ。
この冬には国家試験をパスして、お医者さまの一歩を踏み出されるのだろうけど……ずっと、落語を続けてほしいなぁ。
チクショー! この、変態野郎!
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