永代橋
次回掛ける予定の、噺の舞台である。
江戸、大川の橋と云って、いの一番はやっぱり「両国橋」だろう。
両国と云えば、花火。
「上がった上がった上がったァ、た〜が屋ァ〜〜!!」
の舞台は両国橋だ。
近代の建築だけど、隅田川に架かる唯一の跳ね橋「勝鬨橋」も有名だし、華がある。
それから比べると、永代橋は至って地味だが……。
地図から見ると、どうやら江戸時代には、隅田川で最も下流に架けられていた橋らしい。
だから、この橋から身投げをすれば、すぐ江戸湾……海……すなわち“あの世”への、最短ルートになるわけで……。
永代橋は「彼我の結界」の象徴なのかも知れない。
永代橋自体にはあまり印象はないのだが、地図を見ていて、ありありと思い出したことがある。
もう十年以上前のこと。
ワタクシは「K&Kクラブマンズミーティング」という、素人カーレースの運営スタッフをやっていた。
そのスタッフ会議の会場が、一時期、永代橋を渡った東の先、東陽町の某・ファミレスだった。
当時、埼玉の浦和に住み、蕨に勤めていたワタクシは、愛車ステップバンを首都高に駆って、9号線木場インターに向かい、またそこから帰るのが常だった。
あるとき……たまたま、会議が金曜だった。
それなら、あわてて一人寂しく浦和の自宅に帰ることはない。
このレース発起人のひとり、タンドーのオッサンを、当時のネオ・ライフのお店へ送りつつ、ワタクシもオッサンの店のバックヤードに寝かしてもらえばいいべ……
同じ方面へ帰る、ミカちゃんとタマちゃんも、同乗することに。
こういう時に限って、トラブルは起こる。
東陽町を出発して、いくらも行かない、まだ隅田川を渡る手前……もんじゃ焼きで有名な門前仲町を前にして、ステップくんたら“ギャギャギャ〜ン!”と、恐ろしい叫びを上げはじめた。
「じぇじぇ! 何だぁ〜!?」
なにを隠そう、助手席に鎮座ましますタンドーのオッサンは、ワタクシのステップの“主治医”。
エンジンルームを開けるや……
「オルタネーター(発電機)が焼き付いた。ベルトを切断してはずせば、とりあえずエンジンは回るけど……いつまで持つかは、バッテリー次第だな。どうする?」
悩んで立ち止まっているなら、望みがわずかでも、動いているほうがいい。
瞬時にそう思ったワタクシだが、オッサンにニッパーを渡す手は、ためらっていた……
でも結果、それで良かったのだ。
週末の新宿の大・人込みを抜け、環七、環八を突破する毎に、我らが車内は大拍手! ミカちゃん、タマちゃんを自宅まで送り届けながら、オッサンとワタクシも無事、店へ帰りついたのだった……。
永代橋にまつわる、ワタクシのとりとめもない、思い出である。
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