呼び名
幼い頃から「ちゃん付け」で呼ばれたことが、滅多にない。
「ちゃん付け」は、なかなかビミョーなものである。「さん」「くん」「呼び捨て」と、あまたあるなかで、「ちゃん」は一番、距離感のレンジが狭い。まして、イイ歳こいた野郎だと、まず、そんな呼ばれかたは、しない。
ワタクシの今までの人生のなかで、ワタクシを「ちゃん付け」で呼んでくれているのは……
高校からの親友Nと、その一家に……、小染姐さんと、笑遊師匠だけだ。
親友N一家は、ワタクシの苗字から「ミッちゃん」と呼んでくれる。
笑遊師匠に初見参したとき、ワタクシは自らの高座名を「とんぼ」に決めていた。
「あぁた、高座名はある?」
「ハイ……、昔使ってたのもあるはずなんですけど、どういうわけかスッカリ忘れちゃったんで……改めて、考えました」
「何てぇの?」
「“裁落亭とんぼ”ってんです」
「“とんぼ”……呼びやすい、イイ名だね!! じゃあ今日から早速“とんぼちゃん”で行こう!」
「ありがとうございます!! よろしくお願いします!!」
瞬間、笑遊師匠とワタクシの間の緊張・ギャップが、ス〜ッと溶けた。
初会の会話からこのかた、笑遊師匠はワタクシをずっと“とんぼちゃん”と呼んで遇してくれている。
あのタンドーのオッサンすら、ついぞワタクシを「ちゃん付け」で呼んでくれることがなかった。そもそもの始まりが店主と客の関係だったし、どこか緊張というかギャップというか、互いに敬遠するような雰囲気があったんだろう。
それを知ってか知らずか、笑遊師匠は、ワタクシを「ちゃん付け」で呼んで、自ら垣根を取っ払い、ギュッと抱きしめてくれた(……あ、肉体的にではないですよ、精神的な意味で)のだった。
いまだ生意気な弟子です。相すみません。
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コメント
たしかに笑遊さんはいつも
とんぼちゃんと呼んでますね。
これからも、夢に出てきたら
そういうふうに呼ばれると思いますよ。
投稿: すゞめ | 2015年2月21日 (土) 01時33分
すゞめ姐さん、ありがとうございます。
どうぞ遠慮なく「とんぼちゃん」呼ばわりしてくださいませね。
ところで……
あと二人ほど、いつもワタクシを「ちゃん付け」で呼んでくれる人がいらしたのを、失念してました。
ひとりは、最初に勤めた会社の一年先輩にして、その頃さんざ一緒に遊び回った、Kさん。
もうひとりは、米沢の、小枝師匠。
ワタクシにはかけがえのない、大切な人です。
投稿: とんぼ こと 卓 | 2015年2月23日 (月) 23時41分