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2015年2月14日 (土)

テレスコ

同じ魚なのに、成長するにつれて、呼び名が変わる魚がある。代表的なのは“鰤”。しかも東と西で“ブリ”になるまでの呼び名が違う。

大多数の人間も、ちょっと前までは、ステージ毎に名乗りを変えてきた。
幼名があり、字(あざな)があり、官職名があり、号があり……そして、本人のごく周辺しか知らない“本名”があり、そしてあの世に逝けば“戒名”“法名”を授かる。

子が産まれれば「母さん」「父さん」に、孫ができれば「爺ちゃん」「婆ちゃん」になり、墓標と遺影がよすがとなれば「写真のお爺ちゃん、お婆ちゃん」になる。

ワタクシの祖父母で、まみえることがなかったのは、母方の“金次郎爺ちゃん”だけだった。だから、金次郎爺ちゃんは、物心ついた頃には“写真のお爺ちゃん”だった。他の祖父母には、何かと可愛がってもらったが、名前を避けて、居住地で呼んでた。母方の祖母は“鶴瀬のお婆ちゃん”、父方の祖父母は“花小金井のお爺ちゃん・お婆ちゃん(後に志木に引っ越したので「志木のお爺ちゃん・お婆ちゃん」に変わった)”のように。

今の日本で、そんな風に名乗りが変わるのは、落語などの伝統芸能の世界や、相撲界くらいだろう。前座名があり、中堅の名があり、大看板を代々引き継ぐ名跡がある。

今夜のラジオを聴いてて、ひとつ、引っ掛かった。
昨日まで散々連呼していた“イスラム国”を、突然そう呼ばなくなったのだ。
どうやら“IS”という略称で呼ぶことに、なったらしい。それが証拠に、さりげなく「自らを“イスラミック・ステイツ、イスラム国”と称する過激派組織」という、ご丁寧というかなんというか、そんな“補足説明”を付け加えていたから。

呼び名を変えるに至った事情も、まぁ、解らないではないけれど。

洒落た芸名を名乗っていた芸能人、それくさい法名を名乗っていた宗教家も、罪を犯して捕まれば、本名を曝される。

烏賊は干したら、スルメになる。

テレスコは、干したら、ステレンキョウ。

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