ダイコのコウコ
古典落語を知ってる人ならわかるけど、フツーの現代日本人の大部分には、ピンと来なくなっちゃってるコトバが、まま、ある。
“タナチン”。
このコトバについては、今の日本人のほとんどが“与太郎レベル”だと思われる。
もっとも「家賃」とホンヤクすれば、与太郎レベルはいないけど。
“オコウコ”。
ワタクシの記憶が確かならば、ワタクシ自身もこのコトバを憶えたのは、落語に出会ってからである。
「漬物」だ。
“オシンコ”は、まだ通じるんだけどな(飲み屋の品書きにあるからね)……。
一週間ほど前に、あるところで“タナチン”“オコウコ”の出てくる落語をやってきた。
我ながら結構自信のある演目だったのに、お客様の反応が、今一つ。
もちろん、稽古が足りないのは否めないけれど、それにしてもなぁ……
あ、そうか。
いきなり「タナチン待ってくれ」と言ったって、みんな何のことやら判らないんだな。
さらに“ダイコのコウコ”なんざ出てきた日には、何が何やら、だよなぁ……。
そうだ。別に昔通りのコトバ使うこと、ないじゃん。ホンヤクしちゃえばいいじゃない。
と思って、今朝、敢えて“タナチン”を「家賃」、“ダイコのコウコ”を「大根の漬物」に言い直して、噺の稽古にとりかかった。
が……。
これが、どうしても馴染まない。
時事のクスグリなんかは、不思議とスンナリ入るのに「家賃」「大根の漬物」へのホンヤクは、ダメなのだ!
口慣れた噺ということを割り引いても、だ。
言い換えた途端、噺の世界とリズムが崩れちゃうのである。
ムムム………
下手なホンヤク、止めた!!
タナチンは店賃、ダイコのコウコは大根の香々で押し通そう。
だって下手すると“大家さん”だって通じないかもしれないし。
だいいち、蒲鉾より大根のが、玉子焼きより沢庵のが、お酒よりお茶のが、値が張ったりするもんね。
♪花は 花は 花は咲く
いつか恋する君のために♪
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コメント
長屋の花見ですね。この噺は、今の時期しか出来ませんからね。
投稿: 小道 | 2015年4月26日 (日) 07時30分