オケラ街道
学生時代。
ギャンブル場の警備が、アタシの小遣い稼ぎの主要な場所だった。
ユーミンの歌に出てくる競馬場では、正面ゲートのセンターとゆう、一番カッコイイポジションを何度も務めた(手当もついたし……)。
有馬記念でごった返す中山競馬場にも行ったし、多摩川競艇にも行ったっけ。
何故かどの現場でも、隊長さんや班長さんが目を掛けてくださって、良いポジションとか、隊長の側で隊長の仕事ぶりのすごさを目の前にできるポジションをもらっていた。
終わり頃は、専ら「渋谷wins(場外馬券売場)」に行ってた。
他の現場より給料は安かったけど。
仕事が格段にラクだったし。
何よりそこで知り合った先輩のオジサンたちと、帰りに立ち飲み屋で一杯やるのが、とても楽しみだった。
中山開催のとき、府中の隊長が、応援メンバーで渋谷に来たことがある。
「なぁお前、府中に戻って来てくれないか?」
「イヤーだ、ベロベロベロベロべ~!」
「ほな、勝手にしろ~!!」
(……いくら何でもこんな失礼な口は、ようききませなんだが……)
さて。
府中も中山も多摩川も渋谷も、アタシが立ってた側には必ず、簡易な一杯飲み屋さんがありましてね。焼き鳥やモツ煮込みの匂いを盛んに立てては、お客の鼻と胃の腑を誘っておりました。
メインレースがゴールする3時半過ぎ。大部分のお客は、外れ馬券と競馬新聞をひきちぎり、辺りに花と撒き散らしながら、駅へと歩いて行きます。中に僅かに、飲み屋のあるかなしかのノレンをニコニコ顔でくぐるオッサン。モツ煮込みをつまみながら呑む一口の、美味そうなこと!
そんな夕景を
「オケラ街道」
とは、言い得て妙なる表現ですなぁ。
今住んでる福島市。
夏競馬に沢山のご来場。ありがたや。
でもね。
福島競馬場には、「オケラ街道」が無い。
アタシにはちょいと物足りないのであります。
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